TS590の部屋



 2010年10月にTS590を購入しました。使い込んだというわけではありませんが、CWに限定した使用感を書いてみようと思います。


(1)ルーフィングフィルターによる受信性能比較

  TS-590はバンドによって、ダウンコンバージョンのダブルスーパーになる場合と、アップコンバージョンのトリプルスーパーになる場合があります。
  アップコンバージョンのトリプルスーパーで動作する18MHzでは、自分が聞いている周波数の1kHz隣にQRVする局が出てきた場合、了解度はK3より明らかに悪くなります。それは、隣の信号でAGCが動作してしまうからのようです。このバンドでは、今まで一世を風靡していた第1IFが60〜70MHzのアップコンバージョンのリグと同じなので、勝負は見えていました。
 それから、無信号時のノイズもK3よりもTS590の方が多いです。ノイズの量と、質の問題でしょうか。ノイズについてはこの後触れたいと思います。

         
 FT1000MP MARK-V FieldのオリジナルとINRADのルーフィングフィルター比較(INRADより)      

 トリプルスーパーのFieldのルーフィングフィルターはオリジナルの場合-40dBにおいて50kHzほどの帯域になります。このフィルターをINRADのルーフィングフィルター(-40dBにおいて10kHzの帯域)と交換しました。すると、数値はわからないのですが、(あくまでも私の聞いた感じにすぎませんが)私は2つの印象を持ちました。1つは、40mバンドで信号の聞こえないところを聞くと(なかなかないので夜がお薦め)、以前の何となくザワザワした感じが少なくなりました。ザワザワがサワサワと聞こえるのです。2つめは、受信している信号が澄んで聞こえるのです。どちらもIMDが改善されたからなのでしょうね。INRADのルーフィングフィルターは混んでいるバンドでIMDの改善が期待できます。FT1000MP MARK-V Fieldの場合はだいたい10dBほどのようです。ノイズの量の差は、スイッチ1つでフィルターを切り替えるわけではないのでわかりません。


TS590のルーフィングフィルター比較(TS590のパンフレットより)

 TS590の場合は1.8/3.5/7/14/21MHz帯で帯域幅が2.7kHz以下の場合のみダブルスーパーのダウンコンバージョンになり、-40dBにおいて10kHzあるいは3kHz位の帯域のルーフィングフィルターを使えます。しかし、その他の場合はトリプルスーパーのアップコンバージョンとなり、-40dBにおいて60kHzの帯域のルーフィングフィルターを使うことになります。
 ダブルスーパーとトリプルスーパーなので単純に比べるわけにはいきませんが、無信号時のノイズの量と質は明らかに違います。残念ながらCWは一番広域にしても2.5kHzなので、1.8/3.5/7/14/21MHz帯では必ずダブルスーパーのダウンコンバージョンとなりますから、比較はできません。しかし、SSBの場合は1.8/3.5/7/14/21MHz帯で受信帯域を2.7kHz以下にするとダブルスーパーのダウンコンバージョンとなりますが、受信帯域を2.8kHz以上にすると、トリプルスーパーのアップコンバージョンとなり、スイッチ1つで受信フィーリングを比較することができます。
 7MHz帯SSBで比較したところ、受信帯域が2.7kHzと2.8kHzではノイズレベルはS2〜3違います。わずか0.1kHzの帯域幅の違いしかないのにノイズの量がそれだけ違うというのは、ルーフィングフィルターの帯域幅と周波数変換の回数が原因でしょう。
 それから、ノイズの音がザワザワからサワサワに近くなります。50kHzの帯域の中には7MHzですと強い局がたくさんいます。そうすると、IFアンプの中でごった煮状態になってしまうのでしょう。それが、10kHzや3kHzの帯域になれば、ごった煮ではなくある程度信号が絞られてくるので、IFアンプもDSPも負担が少なくなるというわけです。
  なお、2.7kHzのルーフィングフィルターと500Hzのルーフィングフィルターの差はどれくらいかというと、7MHzCWモードの500Hz帯域と600Hz帯域で比べてみると、S0.5程度でした。
   
  
              K3のルーフィングフィルター(INRADより)

  1.8/3.5/7/14/21MHz帯のみK3と勝負になるTS590です。そのK3でルーフィングフィルターを替えてノイズがどう変わるか試してみました。DSPの帯域は250Hzに固定します。CWモードでは6kHzのルーフィングフィルターを使うことができないので、7MHzLSBで実験しました。
 @ 6kHzの場合 ノイズはS3
 A2.7kHzの場合 ノイズはS3
 B 1kHzの場合 ノイズはS2.5
 C400Hzの場合 ノイズはS2  ゲイン補正後(+1dB)S2
 D250Hzの場合 ノイズはS1  ゲイン補正後(+3dB)S1.5
400Hzと250Hzの場合はフィルターのロスも考慮に入れて、ゲイン補正後のデータもとってみました。補正量はK3の説明書に記載されている値です。
 ノイズの質の変化もあります。ルーフィングフィルターが広ければ広いほどノイズが揺れるというか変化しますが、狭くなるにつれてノイズの揺れが少なくなり、聞きやすくなります。

 さて、第一項のまとめとしてTS590とK3のどちらを選ぶかということですが、1.8/3.5/7/14/21MHz帯以外のバンドでは文句なしにK3です。1.8/3.5/7/14/21MHz帯ではどうかというと、普段のワッチにはTS590を使いたいです。それは、RF,IF,AF全てを通過して出てきた音が、TS590の方がしっとりしていて聞きやすいのです。TRIOの音を受け継いでいる感じを受けます。しかし、コンテストでは迷わずK3を選びます。ルーフィングフィルターを250Hz、DSPを250Hzに設定すれば、隣接局からほとんど影響を受けずにランニングできます。幅寄せられても、そのうち相手の方が逃げていくのです。

(2)操作性 (続く)


 
 TS590は1台のリグの中にアップコンバージョンのトリプルスーパーとダウンコンバージョンのダブルスーパーが存在する珍しいリグです。実売価格が18万円程度ということを考えれば、初心者を卒業してリグを買い換える時に、新しいリグの最有力候補にして差し支えないと思います。

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